レーザーの原点 ルビーレーザー Vol.2

前回はルビーレーザー誕生のドラマをお話ししましたが、今回は「実用化から医学的アプローチがどう広がっていったか」という、少しディープな進化の軌跡に触れていきますね。
ルビーレーザーの波長(694.3nm)は、メラニン色素にガツンと反応する一方で、血液中のヘモグロビンにはほとんど吸収されないという優れた特性を持っています。そして、赤みがでるとメラニンはより強調されるため、メラニンを多く含む病変には皮膚へのダメージを少なくかつ絶大な効果を発揮するんです。
ただ、初期のルビーレーザーは「ロングパルス(照射時間が長め)」だったため、熱のダメージが強すぎてメラニンを作り出す細胞(メラノサイト)までゴリゴリに破壊してしまいました。「あざは消えたけれど、そこだけ皮膚が白く抜けてしまう(白斑)」という、困った副作用が課題だったのです。
そこで登場したアイデアが、「メラニン色素(細胞の1/1000のサイズ)だけを打ち砕き、細胞自体にはダメージを残さないくらい照射時間を極限まで短くすればいいのでは?」という発想でした。こうして開発されたのが「Qスイッチレーザー」です。
Qスイッチというのはレーザーの発振方式を指すのですが、この技術によって「ナノ秒」という一瞬の照射が可能になりました。結果として白斑のリスクが劇的に下がり、あざだけでなく一般的なシミなど、メラニンが関わる幅広い治療へ応用できるようになったのです。
さらに、照射時間を短くすればするほど瞬発的なパワー(ピークパワー)が高まるため、皮膚の深いところ(真皮層)に潜む病変にも届くようになります。それにより太田母斑などの深いあざや、タトゥー(刺青)の除去までカバーできるようになりました。たしかQスイッチが世に出たのは1985年前後だったと記憶しています。その後1996年頃には一部のあざ治療で保険適用が認められ、この時期からようやく「レーザー治療」という存在が世間に認知され始めたのではないでしょうか。
ちなみに「レーザー」と聞くと、皆さんの中では「医療脱毛」から広がった印象が強いかもしれません。 ですが実は、歴史としては「あざの治療」からスタートし、そこから脱毛や美容分野へと広がっていったのです。「美容皮膚科のイメージ」が強いレーザーの原点を築いたのが、実は形成外科だったというのはちょっと意外ですよね。
さて……「で、ぶっちゃけルビーレーザーって何に効くの?おすすめは?」という話ですよね。
結論から言うと、ほくろ、シミ、あざ、肝斑などメラニンを介在する病変はなんでもおすすめです。そして私たちアジア人向けの機械です。とっても。
大きく盛り上がったホクロは炭酸ガスレーザーで削る手もありますが、盛り上がりのない平らな黒いホクロ(シミ状のもの)なら、ルビーレーザーの「短パルス」と「Qスイッチ」を巧みに組み合わせることで、たった1回でほぼキレイになります。炭酸ガスで削るよりもダウンタイムが圧倒的に軽いのも魅力です。
ただ近年では短パルスの魅力・必要性を知らない先生ばかりになってしまったため、短パルスモードが搭載されたルビーレーザーはもう新しい機種では生産されていないのではないでしょうか… 使ったことがない、あってもあることを知らなかったなんて言われることもある短パルスモード。
ホクロ治療には短パルス、あるといいんですけどね。
ほとんどがQスイッチのみでフラクショナル機能を搭載したものに限定されている印象があります。
もちろんシミに対する切れ味も抜群ですが、これは扱う医師の技術や術後のホームケアにも左右されます。これはどの機械でも言えることですね。あとは太田母斑や蒙古斑、異所性蒙古斑などもルビーで十分に美しく治せますし、保険が適用できるケースも多く存在します。
そして肝斑。ルビーフラクショナルによる肝斑治療は私のイチ押しです。
これは論文上では悪化が指摘されており推奨されておりませんが、適切な出力で照射をすると劇的な改善が得られます。これも医師の技量が問われる施術のひとつですね。今後学会発表していこうと考えているもののひとつです。
ルビーレーザーは一番の「クラシック(古典的)」な存在ですが、今なおその価値は語り尽くせないほど高く、私個人としても本当に愛着のある大好きなマシーンです。
長くなってしまいましたが、次回以降はもう少し肩の力を抜いて、他のレーザー機器についてもゆるりと語っていこうと思います!
崎尾怜子
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