
以前、光の「波長」についてお話ししましたね。 実は、レーザー機器の性能を語る上でもう一つ絶対に欠かせない要素があります。それが「パルス幅」と呼ばれるものです。 また少し物理っぽい専門用語が出てきて身構えてしまうかもしれませんが、要するに「レーザーを1発ポチッと照射している時間の長さ」のことです。
この照射時間が長いと、ターゲットに熱が加わる時間も長くなるため、周囲に熱がジワジワと溜まりやすくなります。逆に照射時間が短ければ短いほど、反応が一瞬で終わるため、周囲に余計な熱が広がりにくくなります。
この特性をどう使い分けるかというと、ターゲットにする組織が大きいときはパルス幅が長いものを選び、組織が小さいときはパルス幅をできるだけ短くします。そうすることで、熱の広がりによる余計なダメージ(副作用)を抑えられるんです。
例として「毛」と「シミ」で比較してみましょう。どちらもメラニンという黒い色素をたっぷり含んでいるため、私たちの目には黒や茶色に見えます。 当然、どちらの治療でもメラニンに吸収されやすい波長を選ぶのですが、ここからもう一歩踏み込んでみますね。
まず「毛」は、メラニンを含んだ組織の大きな塊です。しかも脱毛を成功させるには、毛そのものだけでなく、毛の周りにある組織にもしっかり熱を伝えないと、毛が抜けたり減ったりしてくれません。つまり、ある程度の「熱だまり」が必要になります。そのため脱毛マシンでは、メラニンに反応する波長に加えて、パルス幅が3ミリ秒〜20ミリ秒ほどある長めのレーザーが主流になっています。
一方で「シミ」は、メラニンを含んだ表皮の角質細胞が、ターンオーバーの乱れによって積み重なったものです。メラニン自体は、一つひとつの細胞の中に点在しているくらいの、本当に小さな小さな組織です。
そのため、肌に余計な火傷を起こさず、シミのメラニンだけをピンポイントで破壊したいときは、パルス幅ができるだけ短いレーザーを使いたくなります。そこで登場するのが、最近よく耳にする「ピコレーザー」です。 パルス幅が「ピコ秒(1兆分の1秒)」という驚くほど一瞬の世界なので、周囲への熱ダメージが非常に少なく、レーザー治療の後にありがちな「炎症後色素沈着」などのトラブルが起きにくいのが強みです。
このように、ただ「メラニンによく反応する波長」を選ぶだけでは不十分なんです。 壊したいターゲットの大きさに合わせて、最適なエネルギーを送り込めるパルス幅を持ったレーザーを選ぶ必要があります。実際の治療では、ほかにもたくさんの要素を計算してマシンを選んでいるんですよ。
「レーザーの治療って、本当に奥が深いんだな……!」
そんな風に、少しでもプロのこだわりが伝わったら嬉しいです。
崎尾怜子
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