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ドクター解説

笑顔で変わる顔のボリューム〜Transverse Facial Septumから考える自然なフィラー治療〜

笑顔で変わる顔のボリューム〜Transverse Facial Septumから考える自然なフィラー治療〜

美容医療では、「どこに、どれだけフィラーを注入するか」が仕上がりを大きく左右します。
しかし、私たちの顔は静止しているわけではありません。笑う、話す、食べるなど、表情に応じて筋肉・脂肪・皮膚は常にダイナミックに動いています。
だからこそ私は、真顔だけではなく、笑顔や会話中の表情まで評価した上で治療計画を立てることを大切にしています。
この考え方を解剖学的に裏付ける構造として近年注目されているのが、Transverse Facial Septum(TFS)です。

Transverse Facial Septumとは?
2019年、Cotofanaらは、中顔面に存在する新たな線維性支持構造であるTransverse Facial Septum(TFS)を詳細に報告しました。

TFSは、大頬骨筋(zygomaticus major)の深層から上顎骨へ連続する線維性支持組織で、中顔面脂肪(midfacial fat compartments)を支える「動的なハンモック」のような役割を果たしています。
安静時には比較的緩んだ状態ですが、笑顔になると大頬骨筋が収縮し、それに伴ってTFSも緊張します。
その結果、

  • 中顔面脂肪体(midfacial fat pads)が上方へ移動する

  • Apple cheek(頬の丸み)が形成される

  • 若々しい立体感が生まれる

ことが示されています。
つまり、顔のボリュームは固定されたものではなく、表情によって変化する「Dynamic Anatomy(動的解剖)」なのです。

Dynamic Filler Assessmentという考え方
この発見から生まれた考え方が、
Dynamic Filler Assessment
です。
従来は真顔だけを見てボリュームロスを評価することが一般的でした。
しかし実際には、

  • 真顔では凹んで見える

  • 笑顔では十分なボリュームが現れる

という患者さんは少なくありません。
そのような患者さんに静止時だけを見てフィラーを過剰に注入すると、

  • 笑顔で頬が膨らみ過ぎる

  • 不自然な丸みが出る

  • Overfilled syndrome

につながる可能性があります。
そのため近年では、
静止時だけではなく、笑顔を含めたDynamic Assessmentを行い、必要最小限の注入量を決定することが重要である
という考え方が広まっています。

この考え方は口周りにも応用できる
この「Dynamic Anatomy」の概念は、中顔面だけではありません。
私が学会で発表するAccordion line(カーテンじわ)も、笑顔になったときに目立つDynamic wrinkleの一つです。
その原因は、

  • 皮膚のたるみ(Skin laxity)

  • 脂肪の萎縮・再分布(Volume loss)

  • 口輪筋やDAOなどの筋活動(Muscle hyperactivity)

  • 骨格支持の低下(Skeletal remodeling)

が複雑に組み合わさっています。
つまり、Accordion lineは単なる「シワ」ではなく、表情に伴う複数の解剖学的変化の結果として生じる現象なのです。
そのため治療も一つではありません。
患者さんごとに原因を評価し、

  • RFによる皮膚収縮

  • フィラーによる支持力の回復

  • ボトックスによる筋活動の調整

  • スキンブースターによる皮膚の質の改善

を組み合わせることで、より自然で美しい結果を目指します。

自然な美容医療とは
美容医療は、単に「シワを埋める」「ボリュームを足す」治療ではありません。
顔は動く組織です。
だからこそ、
静止した顔だけではなく、笑ったときや話しているときまで美しく見えること。
それが、私が考える自然な美容医療です。
顔の動きを理解し、その人本来の表情を生かしながら治療を行う。
これからのフィラー治療は、Dynamic Anatomyを理解した上で行う時代へと進んでいくのではないかと考えています。

References

  1. Cotofana S, et al. The Transverse Facial Septum: An Anatomical Study. Aesthetic Surgery Journal. 2019.

  2. Cotofana S, Schenck TL, et al. The Facial Adipose Tissue: A Revision. Facial Plastic Surgery. 2020.

  3. Rohrich RJ, Pessa JE. The Fat Compartments of the Face: Anatomy and Clinical Implications. Plastic and Reconstructive Surgery. 2007.

  4. Mendelson BC, Wong CH. Changes in the Facial Skeleton With Aging: Implications and Clinical Applications in Facial Rejuvenation. Aesthetic Plastic Surgery. 2012.

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