
先日、日本美容外科学会2026に参加してまいりました。
今回の学会では、美容外科手術から美容皮膚科、術後トラブルのマネジメントまで非常に幅広いセッションが行われており、美容医療がますます総合的なアンチエイジング医療へ進化していることを改めて実感しました。
その中でも今回ご紹介するのは、スキンリジュビネーション(Skin Rejuvenation)と高周波治療をはじめとするEnergy Based Device(EBD)に関するセッションです。
老化は「皮膚だけ」の問題ではない
顔の老化は以前から、
骨の萎縮
脂肪の萎縮と下垂
筋肉の拘縮
皮膚の弾力低下
など、顔の全層で起こる変化として理解されてきました。
実際、加齢による顔貌変化は単純に皮膚だけの問題ではなく、骨・脂肪・筋肉・皮膚が複雑に関与しています。
さらに近年では、靭帯(retaining ligament)の変化や皮膚そのものの再生能力の低下も老化に大きく関与していることがわかってきています。
つまり現在の美容医療は、単にシワを伸ばしたりボリュームを補うだけではなく、「組織全体をいかに若々しい状態へ導くか」という考え方へ進化しています。
注目されている「線維芽細胞の老化」
近年の研究で特に注目されているのが、真皮線維芽細胞(Dermal Fibroblast)の老化です。
線維芽細胞はコラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸などを産生し、肌のハリや弾力を維持する重要な細胞です。
若い皮膚では線維芽細胞が活発に働き、組織修復やコラーゲン産生が正常に行われています。
しかし加齢や紫外線、慢性炎症、酸化ストレスなどによって線維芽細胞は「老化細胞(Senescent Cell)」へと変化します。
老化細胞は単に働かなくなるだけではありません。
炎症性サイトカインや組織分解酵素を放出し続け、周囲の組織環境そのものを老化させてしまうことが知られています。これはSASP(Senescence Associated Secretory Phenotype)と呼ばれる現象です。 (Frontiers)
最新研究から見えてきた皮膚老化のメカニズム
2025年に発表されたレビュー論文
「Recent Advances in Dermal Fibroblast Senescence and Skin Aging: Unraveling Mechanisms and Pioneering Therapeutic Strategies」
では、皮膚老化の中心的な要因として線維芽細胞老化が詳しく解説されています。 (PubMed)
この論文では、
DNA損傷
ミトコンドリア機能障害
酸化ストレス
テロメア短縮
などが線維芽細胞老化を引き起こすことが示されています。 (Frontiers)
さらに老化した線維芽細胞は、
コラーゲン分解酵素(MMPs)の増加
慢性炎症
ECM(細胞外マトリックス)の破壊
周囲細胞の老化促進
を引き起こし、皮膚全体の老化を加速させると考えられています。 (Frontiers)
つまり老化とは単純に「コラーゲンが減る」という現象ではなく、
「老化した細胞が周囲環境まで老化させる現象」
として捉えられるようになってきています。 (Frontiers)
ECM(細胞外マトリックス)の重要性
近年さらに重要視されているのがECM(Extracellular Matrix:細胞外マトリックス)です。
ECMとは、
コラーゲン
エラスチン
ヒアルロン酸
プロテオグリカン
などによって構成される、細胞を取り囲む「環境」のことです。
線維芽細胞はこのECM環境の中で働いています。
そのため、ECMが加齢によって断片化し環境が悪化すると、線維芽細胞そのものの機能も低下してしまいます。
近年では、
「ECM環境の悪化が線維芽細胞老化をさらに促進する」
という考え方も提唱されています。 (MDPI)
つまり肌を若返らせるためには、
単にコラーゲンを増やすだけではなく、
「線維芽細胞が働きやすい環境を整えること」
が非常に重要なのです。
肌育製剤と高周波治療の役割
今回の学会でも繰り返し議論されていたのが、
「いかに細胞環境を改善するか」
というテーマでした。
近年注目されている肌育製剤は、単なる保湿やボリューム補充ではなく、
ECM環境の改善
線維芽細胞活性化
組織再構築
を目的とした治療として位置付けられています。
また、高周波(RF)治療をはじめとするEnergy Based Deviceも、熱刺激による創傷治癒反応を利用し、
コラーゲン再構築
ECMリモデリング
組織修復
を促進することがわかっています。
つまり現在のスキンリジュビネーションは、
老化細胞による悪影響を減らす
線維芽細胞が働きやすい環境を作る
ECMを健全化する
コラーゲンを再構築する
という方向へ進化しています。
「何を入れるか」から「どんな環境を作るか」へ
美容医療は長らく、
「失われたものを補う」
という考え方が中心でした。
しかし現在は、
「細胞が本来の能力を発揮できる環境を整える」
という方向へ大きくシフトしています。
今回の学会でも、Skin RejuvenationやSkin Longevityという考え方が非常に多く語られていました。
今後は単純なボリューム補充だけではなく、
肌育製剤や高周波治療を組み合わせながら、
細胞・ECM・組織環境そのものを若返らせていく治療がさらに重要になると感じています。
自然で健康的な若返りとは、単にシワを消すことではなく、
「細胞が健やかに働ける環境を再構築すること」
なのかもしれません。
今回の学会で学んだ最新知見を今後の診療にも活かしながら、患者様一人ひとりに合わせたSkin Rejuvenationをご提案していきたいと思います。
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