
先日、SkinPlusのラウンドテーブルに参加し、韓国・日本の先生方とECM(Extracellular Matrix:細胞外マトリックス)製剤についてディスカッションする機会がありました。
近年、美容医療において「肌育治療(Skin Booster)」は大きなトレンドとなっています。
これまでの肌育治療は、ポリヌクレオチド(PN)、PDRN、アミノ酸、ヒアルロン酸、各種ペプチドなどを用いて線維芽細胞を刺激し、コラーゲンやエラスチン産生を促進することで肌質改善を目指すものが主流でした。
しかし近年、老化研究の進歩によって、肌の老化は単に細胞機能の低下だけでは説明できないことが分かってきています。
老化は「細胞」だけではなく「環境」の問題
近年の研究では、皮膚老化において重要なのは線維芽細胞そのものだけではなく、細胞を取り巻く微小環境(microenvironment)であることが明らかになってきました。
加齢に伴い、
・コラーゲン線維の断裂
・エラスチンの変性
・慢性炎症の増加
・老化細胞(Senescent cells)の蓄積
・ECM(細胞外マトリックス)の劣化
が進行し、線維芽細胞が本来の機能を発揮できなくなります。
Liらは2024年のレビューにおいて、皮膚老化の中心的な要因として線維芽細胞老化とECMの変化を挙げており、今後のアンチエイジング治療は細胞そのものだけでなく、細胞環境の改善が重要になると述べています。
ECM(hADM)製剤という新しいアプローチ
最近韓国で注目されているECM(hADM)製剤には、
・Re2O
・CellRedm
・SkinPlus
などがあります。
これらは従来の肌育製剤のように細胞を刺激するだけでなく、細胞が存在する「足場(scaffold)」となるECM環境そのものを補うという発想に基づいています。
美容医療の世界でも、
「How can we improve the cellular environment?」
という考え方が少しずつ広がってきています。
これは私が近年興味を持っているSkin Longevity(肌寿命)の考え方とも非常に近いものです。
実際に自分でも受けてみました
私は新しい治療を導入する際、可能な限り自分自身で体験するようにしています。
今回SkinPlusを1回受けてみましたが、約3週間経過した現在、
・肌のハリ感
・ツヤ感
・引き締まり感
について一定の改善を感じています。
ただし、この治療を正しく評価するには複数回の施術と長期経過の観察が必要だと考えています。
なぜ慎重なのか
韓国で非常に人気がある治療だからといって、すぐに導入するつもりはありません。
ECM製剤は比較的新しいカテゴリーであり、
・適切な希釈方法
・濃度設定
・注入深度
・注入量
・注入手技
によって結果や安全性が大きく変化する可能性があります。
特に結節(nodule)形成などのリスクについては十分な注意が必要だと考えています。
5年前の私なら新しい治療をすぐ導入していたかもしれません。
しかし現在は、
「最新であること」
よりも、
「安全に再現性高く結果を出せること」
を重視しています。
IMCAS Parisでご一緒した先生方との再会
今回のラウンドテーブルでは、IMCAS Parisでご一緒に発表したDr. Choi先生、Dr. Bae先生とも再会することができました。
SkinPlusに関する豊富な臨床経験や安全性に関する考え方を共有していただき、大変有意義な時間となりました。
今後も国内外の経験豊富な先生方から学びながら、安全性の高いプロトコルを継続的にアップデートしていきたいと思います。
まとめ
ECM製剤は、これまでの「細胞刺激型の肌育」から、「細胞環境改善型の肌育」へと進化する可能性を秘めています。
一方で、まだ新しい治療領域であり、長期データや最適なプロトコルについては今後さらに検証が必要です。
美容医療において本当に大切なのは、
「新しい治療を導入すること」
ではなく、
「患者様に安全で再現性の高い結果を提供すること」
だと私は考えています。
今後も最新の知見を学びながら、患者様にとって本当に価値のある治療を見極めていきたいと思います。
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院長 平田玲奈
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